Wednesday, October 5, 2011

05/10 TPP参加―丁寧な説明で再起動を

環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に日本も加わるかどうか。米国や豪州など参加9カ国は11月の大枠合意を目指しており、日本にとってもここが判断の節目となりそうだ。

私たちは、まず交渉に参加するよう主張してきた。TPPは成長著しいアジア太平洋地域の自由化の土台となる可能性がある。日本が不利にならないためには、ルール作りからかかわった方が得策だ。交渉に加わり、国益に沿わないと判断すれば協定締結を見送ればよい。

政府は「6月に参加の是非を決める」としてきたが、東日本大震災もあって遅れている。その間、TPPについて様々な懸念が広がった。検討作業を軌道に乗せるには、今の交渉状況について政府が情報を整理・発信し、冷静に議論できる環境を整えることが第一歩となる。


最大の課題は、コメなど高関税品目を抱える農業分野だ。

TPPは「例外なき自由化」が原則だが、実際の交渉では各国とも関連業界の反発から、建前と本音がある。交渉の中心にいる米国は豪州との自由貿易協定(FTA)で砂糖などを対象から外しており、関税撤廃の原則である「10年以内」を超える段階的自由化にとどめた品目も目立つ。TPPでも同様の方針で臨んでいる。

日本の農業関係者は「TPPに参加すると、すべての品目でただちに関税が撤廃されかねない」と危うさを訴えるが、正確さを欠く。大規模化など農業の強化策を早急にまとめ、交渉でそのための時間と条件を確保する。そんな戦略性を持ちたい。

関税以外にも様々な懸念が聞かれる。「単純労働者が大量に入ってくる」「医療制度の抜本改革を強いられる」「環境保護が犠牲になる」「安全基準が緩い食品の輸入を迫られる」といった具合だ。社会的規制と呼ばれ、経済活性化が狙いの規制緩和論議とは異なる視点が求められる分野である。

日本政府の通商担当者は、集めた情報をもとに「懸念の多くはTPP交渉でテーマになっていない」と反論する。その点でも、交渉状況や政府の考え方を丁寧に説明するべきだ。

円高が定着し、空洞化への懸念が一層強まっている。TPPには、関税交渉以外にも貿易手続きの簡素化など日本からの輸出促進につながる項目が少なくない。

「農業対製造業」という単純な対立の図式を乗り越え、産業全体の活性化にTPPを活用する道を探らなければならない。それが野田政権の使命である。

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